今日がお盆最終日。
明日から就活を再開するための決意として、気分の入れ換えとして、何より今までの自分の愚かさを戒めるために、ブログという形で思いのまま文章を残したいと思う。
端的に言って就活に失敗した。
2017年(18卒)の就活市場は、売り手市場真っ盛りだ。多くの学生が思い思いの企業に内定を獲得している。
かくいう私も、現在一応は内定を持っている。
だがこの内定先は、私の志望している業界でもなければ、やりたい仕事でもないし、可能ならば今すぐ別の会社から内定をもらってさっさと捨てたいとも思っている。(だからこそ就活を再開するのだが・・・。)
私の内定先はタクシー会社だ。
この内定先との初めての出会いは合同説明会、今までタクシードライバーをやりたいという気持ちはおろかタクシードライバーという選択肢の存在すら意識したことが無かった。
だが、合説のブースでの説明を聞いて、とても胸が躍った。
「乗務員の月給は平均35万。」「内勤には半年で上がれる」「今年は100人近く採用したい」
「隔日勤務なら次の日が丸々休みでワークワイフバランスがしっかりしている」
「残業なんて無い。法律で厳しく縛られてるから。」
「乗務中はほとんど休憩時間みたいなものさ。みんな同期と通話しながら楽しくやってる。」
社会のことなんて何も知らない私は、こんな会社があるのか、こんなステキな仕事があるのか、と胸が躍り、その場で一次面接の予定を入れてもらった。
お世辞にもアピールが出来た自信が無かったのだが、どういうわけか妙に気に入られたらしく、そのままトントン拍子で内定を頂戴した。
ここまで書くと、まるで内定先が第一志望みたいだが、そんなことはない。あくまで滑り止めとして考えていた程度である。
他の企業に全て落ちたのだ。
行きたかった会社、やりたい仕事の出来る会社、すべてに落ち、内定先へと仕方無しに未来を託すしかなかった。
それでも、内定先への魅力を感じていた時期があるのは確かだ。
給与面や休日面は実際のところあまり魅力に感じなかった。『半年で内勤に上がれる』というキャリア面の魅力が大きかった。
「元々志望していた交通業界であることに変わりは無い。」
「内勤に上がってしまえば、完全週休2日で安定した社会人になる」
この1点だけが、私の持つ内定先の魅力を繋ぎとめていたし、「自分の選んだ会社はいい会社だ。」という愚かで情けないこと極まりないプライドの精神的支柱になっていた。
しかしその魅力は一瞬にして崩れ去る。
騙されていたのだ。
某日、内定先からの招待を受けて、内定者交流会へ参加した。
基本的には内定者同士の親睦を深めるための会らしいが、先輩社員もいたので話を聞くことが出来た。
ここで話を聞くべきではなかった・・・、いや入社後に騙された!と感じるよりは再起のきっかけをくれたと思えば良いだろう。
「内勤になりたいなら2年か3年は運転だねぇ」
説明と違うじゃないか、なんてことだ、たまったもんじゃない。
俺はドライバーやりたくて受けたんじゃないんだ。
こうして魅力に感じていた点が崩れ去るといよいよマイナスの面ばかりが大きくのしかかる。
───騙されていた、なんて仰々しく書いたが、元々騙されているだろうという思いはあった。
就活生に向かって良い事ばかり喧伝するのは当たり前と思っていたし、こっちも何もかも真に受けてはいない。
制服代だのガソリン代だの、とってつけた経費で給料は少ないだろう・・・という覚悟はあったし、隔日勤務で休みしっかりと言いながら、法律破りのハードなシフトを組まれるだろうな、という覚悟もあった。
だが、内勤に半年で上がれるという面だけは真実であって欲しかった。
というよりも、働く上でここだけは譲れない一線であった。
・・・いや、そもそも、半年で内勤に上がれるという前提だからこそ、安月給やハードなシフトだったとしても耐えられる、という思いだったのだ。
なんとも思い込みの激しい事に、『何をされても半年で内勤に上がれる』ことが、モチベーションになっていたのだ。
仕事への不安、人の命を預ることへの不安、なによりタクシードライバーを2年もやらなければならないことへの不安、そして会社への憤りに似た感情も吹き上がってきた。
なにより強く湧き上がった感情は「親に対して情けない」という心苦しさであった。
学力は決して高い大学ではないが、しかしそれなりに名の通る大学に通わせてもらっている。
奨学金も使わず、両親が汗水たらして稼ぎ、貯めたお金を学費として使わせてもらっている。
そんな大学を出て、就いた仕事が「タクシードライバー」である。
最初の数年だけじゃないか、と言われるだろう。
その最初の数年だけでも、「タクシードライバー」という肩書きを持つことが情けなくてしょうがない。
本当に自分が情けなかったし、心の浅いところで就活を舐めていた自分が憎たらしくなった。
親への申し訳なさで心が一杯になった。親の気持ちを考えると吐き気がするぐらいに気持ち悪くなる。
タクシードライバーという仕事が悪い仕事なのではない。しかし、人生で一度きりの『新卒』というスペシャルカードを使って滑り込んだ仕事がタクシードライバーなのだ。
就活に成功して羨望が受けたかったわけではない。
失敗したことに対し、誰かからの赦しが欲しいわけでもない。
親からの庇護をここまで受けておいて、この程度の結果しか残せない自分が許せなかった。
お盆に、両親の実家へ帰省した。
当然、祖父母から就活はどうなっているかと聞かれる。
私は恥ずかしさで何も言えなかった。「あー、まぁ、それなりにねぇ・・・やってはいるよ」とお茶を濁した。
大学に進学したのにタクシードライバーをやるのか?という嘲笑や落胆を受けるかもしれないと思うと、本当のことを言うのが怖かったのだ。
それに、ここで内定先に進むことを言うと、もう『就活生』戻れなくなるような、退路が断たれるような気がした。
帰省しながら考えた。
入社することで情けなさが溢れてくる会社で妥協して良いのだろうか。祖父母に、胸を張って名前を言えない会社ってどうなのさ。
・・・まだ8月じゃないか。
そして私は、就活を再開することを決意した。
このブログを読む人が、この先現れるかは知らない。
文章をしたためている現時点では、非公開設定にしてある。
就活が(良い意味でも悪い意味でも)落ち着いたら、公開しようかとも考えているが、それはまだわからない。
もし読んでる人がいたらこれだけは、ちゃんと伝えたい。
・就活を舐めてはダメだ。
・説明会や面接ではなく、交流会などで、先輩社員の話をちゃんと聞いて現実を知ろう。
・あなたの選んだその会社は、職種は、人に堂々と言えますか?
・私みたいに、就活を舐めてかかり失敗し、情けなさや後悔感でいっぱいになる人が、表れないで欲しい。
私の失敗や後悔を参考にし、同じような道を歩む学生が現れないことを祈る。
こんな辛い思いをするのは私だけで十分だ。
*1:余談だが、この交流会の最中に、仲良くなった同期(予定)の子と会社について話をした。その子も私と同じように、思うような就活が出来ずに内定先へと未来を託した人であった。
その子も内勤に関する話を聞いて、「内勤に半年でなれるって聞いたんだけど・・・」と不安そうに述べていた。そこからお互いの意見や見識を交換し、趣味が似ていることもあり大変に意気投合した。内定者交流会で、夢や理想で意気投合するのではなく、「この会社は避けたほうがいいかもしれない」という逃げの意見で意気投合するとは悲しい話である。
申し訳ないことに名前を忘れてしまったのだが、彼は元気なのだろうか。